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コラム

COLUMN

クリニックのM&Aにおいて、価値評価方法について M&Aにおける価格算出方法とは

  1. 収益性に基づく評価法

1.1 EBITDA倍率法

EBITDA(Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation, and Amortization)は、利息、税金、減価償却前の利益を指し、クリニックの収益力を評価するためによく使用される指標です。EBITDAを用いた評価法では、クリニックのEBITDAに業界で一般的な倍率を掛け合わせて価値を算出します。

例えば、あるクリニックのEBITDAが年間1,000万円で、同業界の平均倍率が5倍であれば、クリニックの価値は5,000万円となります。EBITDA倍率法は、クリニックの収益性を直接反映した評価方法であり、M&Aにおいて広く用いられています。

1.2 DCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)

DCF法は、将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いてクリニックの価値を算出する方法です。クリニックが将来的に生み出すと予想されるキャッシュフローを一定の割引率で割り引くことで、現在の価値を算出します。

この方法は、クリニックの将来性や成長ポテンシャルを考慮に入れる点で非常に優れていますが、将来のキャッシュフローや割引率の設定には専門的な知識が必要です。また、予測が正確でない場合、評価額に大きな誤差が生じる可能性があるため、慎重な分析が求められます。

  1. 資産に基づく評価法

2.1 簿価純資産法

簿価純資産法は、クリニックの総資産から負債を差し引いた純資産額を基に評価する方法です。クリニックの財務諸表に記載されている資産(設備、不動産、現金など)から負債(借入金、未払い金など)を差し引いた純資産が評価額となります。

この方法はシンプルで理解しやすいですが、クリニックの将来の収益性や成長性を反映していないため、収益性に優れたクリニックには適していない場合があります。また、資産の簿価が市場価値を反映していないことがあるため、特に古い設備や不動産を所有している場合には注意が必要です。

2.2 時価純資産法

時価純資産法は、クリニックの資産と負債を市場価値で評価し、その差額を基に価値を算出する方法です。設備や不動産などの資産を現在の市場価格で再評価し、その上で負債を差し引くことでクリニックの価値を計算します。

時価純資産法は、資産の市場価値を反映した評価方法であり、特に資産の多いクリニックに適しています。ただし、資産の再評価には時間とコストがかかるため、精度の高い評価を行うには専門家の助言が必要です。

  1. 比較に基づく評価法

3.1 類似企業比較法

類似企業比較法は、売却するクリニックと類似した企業やクリニックの取引価格を基に価値を評価する方法です。同じ地域や同じ規模、同じ診療内容を持つクリニックが最近どのような価格で取引されたかを参考にして、売却価格を算出します。

この方法は市場の実態を反映しやすいため、現実的な評価が得られることが多いです。ただし、類似した取引事例が少ない場合や、特異な特徴を持つクリニックの場合には、適切な比較対象を見つけるのが難しいことがあります。

3.2 マルチプル比較法

マルチプル比較法は、収益や売上高に一定の倍率(マルチプル)を掛け合わせて評価する方法です。例えば、類似クリニックの売上高に対して一般的に適用されるマルチプルが2倍であり、売上高が1億円であれば、クリニックの価値は2億円となります。

この方法は比較的簡単に計算でき、市場の評価を反映しやすいという利点がありますが、適用するマルチプルが適切でない場合、評価額が実態とかけ離れるリスクもあります。

  1. その他の要因

4.1 スタッフと患者の維持

クリニックの価値を評価する際には、スタッフや患者の維持状況も重要な要素となります。長年勤めるスタッフや、定期的に通院する患者が多いクリニックは、安定した収益が見込まれるため、価値が高く評価される傾向にあります。逆に、スタッフの離職率が高かったり、患者数が減少している場合、クリニックの価値は低く評価されることがあります。

4.2 設備の状態と技術の導入

クリニックが最新の設備を備え、先進的な技術を導入しているかどうかも、価値評価に大きな影響を与えます。最新のデジタル技術や高性能の医療機器が整っているクリニックは、競争力が高く、将来的な成長が期待できるため、高い評価を受けやすくなります。

まとめ

クリニックのM&Aにおける価値評価は、収益性、資産、比較データ、その他の要因を総合的に考慮して行われます。EBITDA倍率法やDCF法、資産ベースの評価法、比較法など、さまざまなアプローチがあり、クリニックの特性や市場環境に応じて最適な方法を選択することが重要です。また、スタッフや患者の維持状況、設備の状態などの要素も、クリニックの価値に大きく影響するため、包括的な視点で評価を行うことが求められます。適切な価値評価を通じて、売り手も買い手も納得できる取引価格を導き出すことが、成功するM&Aの鍵となります。

東海事業継承サポートセンターでは事業価値の算出、売却金額の算出を行っておりますので、気になる方はお問い合わせください。