はじめに
医療法人M&Aにおいて、理事長交代と行政手続きの整合性は最重要論点の1つです。
決議の順番や届出タイミングを誤ると、
- 診療報酬請求ができない
- 保険医療機関の指定が失効
- 届出が受理されない
という致命的な事態を招きます。
本コラムでは、医療法人承継における理事長交代と行政手続きの正しい流れをわかりやすく解説します。
1.理事長とは医療法人の“代表者+開設者”
医療法人では、
- 法人の代表権を持つ者=理事長
- 診療所の開設者も理事長
となります。
つまり理事長交代は、
法人法務・医療法務・保険手続きの3つが一体で動きます。
2.理事長交代に必要な決議と書類
(1)理事会
- 新理事長の選任
- 旧理事長の退任(または役職変更)
※理事の総数・定足数は定款に基づく
(2)社員総会
- 理事長交代を承認
- 理事・監事の選任/退任
(3)必要書類
- 理事長選任議事録
- 理事長退任議事録
- 社員総会議事録
- 就任承諾書
- 印鑑届
- 登記事項証明書(登記が必要な場合のみ)
3.厚生局・保健所への主な届出
① 開設者(理事長)変更届(保健所)
診療所の“開設者”が変わるため、必ず提出します。
添付書類:
- 理事長変更議事録
- 履歴事項全部証明書
- 就任承諾書
- 医師免許証(写) など
② 保険医療機関の届出(厚生局)
- 保険医療機関の開設者変更届
- 保険医療機関指定内容変更届
- 保険医登録の変更
※これが遅れると レセプト請求不可 になる恐れがあります。
③ 保険医の異動(個人としての医師登録)
理事長が主治医・管理医を兼ねる場合、
保険医の個人変更届も合わせて必要です。
4.M&Aで絶対にやってはいけない順番
理事長交代は、
決議 → 届出 → 運用開始
の順番が鉄則です。
❌ よくある失敗
- 届出より先にレセプト請求してしまう
- 理事長交代の決議日と届出日が矛盾
- 社員総会を忘れて「理事会のみ」で済ませてしまう
- 旧理事長の退任と新理事長就任の日付がズレている
これらは全て行政で弾かれ、業務停止の可能性があります。
5.承継時の最適なフロー(理想形)
STEP1:事前準備
- 定款確認(理事長選任の要件)
- 必要書類のドラフト作成
- 行政相談(事前確認)
STEP2:同日開催の決議
- 社員総会 → 理事会の順で連続開催
- 旧理事長退任・新理事長就任を同時決議
- 就任承諾書への署名押印
STEP3:行政手続き
- 保健所へ開設者変更届
- 厚生局へ保険医療機関の変更届
- 個人の保険医登録変更
STEP4:レセプト・請求先の整合
- 請求システム(ORCAなど)の名義変更
- レセコンの名義・印影の更新
STEP5:社内通知・患者対応
- 院内スタッフへの通知
- 関連機関(薬局・紹介先)への連絡
6.M&A特有の注意点
- 理事長が「承継後もしばらく残る」ケース
その間、
- 理事長=売手
- 開設者=売手
- 経営権=買手
という複雑な構造になることがあります。
契約で役割を明記しないとトラブルになります。
- 複数施設をもつ医療法人
- 本院・分院で開設者が異なる
- 届出窓口(日付)がずれる
ため、院ごとのタイムスケジュール管理が必要。
まとめ
理事長交代は、医療法人M&Aの成功を左右する 超重要プロセスです。
ミスが起きると、その瞬間に
- 保険請求不可
- 業務停止
- 行政受理不可
と、致命的ダメージになります。
成功させるポイントは:
- 各種議事録の“同日付・連続決議”
- 厚生局・保健所の手続きフローを完全把握
- レセプト・レセコンの名義変更を同時進行
- 承継プロトコル(手順書)の作成
確実な法務・医療法務のダブルチェックが不可欠です。
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