はじめに
医療法人のM&Aでは、「社員総会の決議要件」が最大のハードルとなるケースが少なくありません。
医療法人は株式会社とは異なり、社員の人数が極端に少なく(1~3名が多い)、1名の反対でスキーム全体が崩壊することもあります。
本コラムでは、社員総会で求められる定足数・決議要件と、M&Aにおける最適なスキーム設計を整理します。
1.社員総会とは?
社員総会は医療法人の「最高意思決定機関」。
株式会社の株主総会にあたるものです。
主な決議対象は以下:
- 定款変更
- 理事・監事の選任/解任
- 社員の入退社
- 基本財産の処分
- 解散
- 合併・事業譲渡
つまり、M&Aで必要なほとんどの決議が「社員総会」で行われます。
2.定足数(会議成立の条件)
医療法では一般に以下が要求されます。
■ 定足数(会議成立)
- 社員の 1/2以上の出席
■ 普通決議
- 出席社員の過半数
■ 特別決議(定款変更など)
- 出席社員の 3/4(定款により異なる)
- または社員総数の 3/4 など厳しめの規定も多い
法人により定款内容が違うため、
M&A開始前に“定款精読”は必須です。
3.M&Aで特に重要な決議項目
(1)社員の退社・加入(超重要)
社員交代は法人の根幹に関わるため、多くの法人で 特別決議扱い。
(2)理事長交代
こちらは普通決議・特別決議のどちらもあり。
“定款次第”で完全に分かれます。
(3)基金返還の決議
これも定款次第。
多くは理事会決議+社員総会の承認を要する。
(4)事業譲渡(医療法人→個人など)
医療法の性質上、社員総会の承認を必須とする法人が多い。
4.スキーム設計で絶対に失敗してはいけないポイント
(1)決議順序を間違えると“解散”につながる
社員退社 → 空白 → 入社
この順序になると、「退社時点で社員がいない=解散」。
必ず
加入と退社を同時決議・同日付
にすることが必要。
(2)定款の決議要件が異常に厳しい法人がある
例えば:
- 特別決議=社員総数の4/5
- 特別決議=全員一致
- 特別決議=社員総会2回必要
など、過去の設立時に独特のルールで作られていることがあります。
こうした法人では「反対者が1名いると詰み」という事態が普通に起こります。
(3)反対社員がいる場合の解決策
- 反対社員を説得
- 退社してもらう
- 定款変更(ただしこれも特別決議が必要)
- 他のスキームに変更(MS法人活用など)
社員が家族で仲が悪い場合、特にこじれる傾向があります。
(4)決議日・議事録の整合性が最重要
厚生局・保健所のチェックは非常に厳格です。
- 社員総会
- 理事会
- 代表印変更
- 理事長交代届
- 診療所開設者変更届
- 基金返還決議
これらに「日付矛盾」があると受理されません。
5.実務での最適な進め方(プロトコル化)
① 必ず“決議シミュレーション”を実施
定款を読み、以下を確認する:
- 決議要件
- 社員の人数
- 反対者の有無
- 基本財産
- 定款変更要否
② 全決議の“プロトコル(手順書)”を作成
- 決議順序
- 決議日
- 議事録案
- 必要書類
- 届出の期限と順序
③ 決議は同日付で連続して行う
一日で
社員総会 → 理事会 → 社員総会 → 理事会
と連続開催することも普通。
まとめ
社員総会決議は、医療法人M&Aの **「成否を決める最重要論点」**です。
成功させるポイントは:
- 定款の決議要件を正確に把握
- 決議順序を誤らない
- 社員・理事の交代を“同日付・同時決議”で行う
- 決議書類をプロトコル化
- 反対者の存在を最初に確認
社員総会を制する者が、医療法人M&Aを制します。
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