Ⅰ. はじめに
個人医院として長年経営してきた歯科医院も、高度化する医療ニーズや経営リスクなどに対応するため、法人化が有効な選択肢となることが増えています。特にM&Aを活用することで、法人組織として再編しながら経営権を譲渡・統合し、持続可能な体制に移行できるのが特徴です。
Ⅱ. 個人医院と医療法人の違い
個人医院(個人事業主)
- 院長=経営者として一体化、設立手続きが簡単で初期費用が少ない。
- 収益は個人の所得課税対象となるため、高額収益には所得税率が高くなる。
- 承継時には院長の退任と共にクリニックの存続が困難になるケースが多い。
医療法人
- 一定の理事構成要件のもとに法人格を取得、法人税が適用される。
- 利益を法人に留保することで、節税や再投資の余地が大きくなる。
- 法人株式譲渡が可能になり、後継者か買い手で経営権を承継しやすい体制が整う。
Ⅲ. M&Aを通じた法人化(経営権移譲)のスキーム
- 既存医療法人との合併
医療法人AがB医院をM&Aで取り込む形。- 経営方針やブランドを統一し、組織運営を一本化できる。
- 事業譲渡後に法人化
個人医院として売却後、買収法人がその後設備等を引き継ぎ、自社組織下に組み込む形。- 医療法人設立のステップを省略し、運営継続性を担保しながら進められるメリットあり。
- 新設法人を通じたM&A
特定目的法人(SPC)を設立し、その上で複数医院をM&Aしていく手法。- 統一ブランドでグループ化し、設備投資や採用、人材教育を効率化できる。
Ⅳ. 法人化による主なメリット
- 💰 税制面での優位性:法人課税後の利益留保・報酬制度を設計しやすい。
- 🏢 資金調達力の向上:法人化で借入・リース・助成金等に使える余力が増加。
- 👥 人材採用・育成がしやすくなる:法人経営の下で教育・職域管理が制度として整備可能。
- 🔄 承継のストレス軽減:株式の譲渡で経営者交代でき、親子・第三者どちらでも接続がスムーズ。
Ⅴ. 法人化の留意点・リスク
- 設立手続・認可要件:厚生局所管などの手続きが必要で手間と時間、コストがかかる。
- 理事長や理事選任のガバナンス:理事・監事制度など管理体制に負荷が増す。
- 経営方針のすり合わせが必須:経営統合による企業文化のミックス調整が必要。
- 譲渡形式による税務相談の必要性:どの譲渡形態が節税になるかはケースバイケースで専門家判断が必須。
Ⅵ. 成功事例:法人化&買収による組織強化
- A医院(個人医院)が法人BにM&A → 法人形態で統一しながら、矯正特化医院を後統合
⇒結果、新たなサービス体系を整備し、売上が30%増加し、スタッフ定着率も上昇 - C医院ではマイナーだった一般歯科診療だが、法人を通じて訪問歯科専門医院を買収し広域展開
⇒助成金・訪問体制整備によって高齢者診療を加速させ、経営が安定
Ⅶ. 実務支援のための提言
フェーズ |
重点検討項目 |
事前調査 |
対象法人の財務・制度設計・税務比較の把握 |
契約設計 |
株式譲渡 or 事業譲渡・法人設立タイミングの調整 |
ガバナンス設計 |
理事会構成・監事制度・会議体運営を計画 |
税務設計 |
博倉報酬・役員報酬・退職金・相続税の設計 |
移行・統合 |
IT/教育体制/文化融合の推進とPDCA設計 |
Ⅷ. まとめ
- M&Aを通じた法人化は「税制優位・経営強化・承継円滑化」を同時に実現する強力な手段。
- 医療法人によるグループ経営の基盤構築が可能になり、スケールメリットや採用力強化に繋がる。
- 法人化には手間やガバナンス、税務の配慮が不可欠。専門家と連携した綿密な設計が成功の鍵となる。
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