M&Aを成功させるためには、弁護士、税理士、会計士などの専門家の協力が不可欠です。これらの専門家は、それぞれ異なる専門知識を持ち、M&Aのプロセス全体を円滑に進め、リスクを最小限に抑えるための役割を果たします。以下では、M&Aにおける弁護士・税理士・会計士の役割について詳しく説明します。
- 弁護士の役割
弁護士は、M&Aにおいて法的なリスクを管理し、契約や許認可に関わる問題を適切に処理する重要な役割を担います。特に、M&Aプロセス全体を法的な側面からサポートするため、弁護士の助言は非常に重要です。
1.1 法的デューデリジェンスの実施
弁護士は、法的デューデリジェンスを実施し、対象クリニックや法人が法的に問題ないかを確認します。これには、以下のような調査が含まれます。
- 契約書の確認(賃貸契約、リース契約、取引契約など)
- 訴訟リスクの確認
- 許認可や規制遵守の状況の確認
これにより、買い手が法的なリスクを把握し、契約前に必要な対策を講じることが可能となります。また、売り手側にとっても、法的な問題が明らかになることで、売却に伴うトラブルを防ぐことができます。
1.2 契約書の作成・精査
M&Aでは、売買契約書や秘密保持契約書など、多くの重要な契約書が必要です。弁護士はこれらの契約書を作成・精査し、売り手と買い手の双方が合意した内容を法的に適切に文書化します。特に、契約書におけるリスク分担や保証条項、違約金の設定など、将来のトラブルを避けるための重要なポイントを明確にする役割を果たします。
1.3 許認可・規制対応
歯科医院やクリニックを運営するには、保健所や厚生労働省からの許認可が必要です。弁護士は、これらの許認可の継承や、事業譲渡に伴う再申請が必要かどうかを確認します。また、医療業界に特有の規制(診療報酬の請求方法や広告規制など)についても、弁護士が助言を行い、M&A後の運営がスムーズに進むようサポートします。
1.4 トラブル時の対応
万が一、M&Aプロセス中やM&A後にトラブルが発生した場合、弁護士が交渉や紛争解決を支援します。契約違反や、許認可の問題、スタッフとのトラブルなど、法的な紛争が生じた際に、弁護士がクライアントを代表して問題解決にあたります。
- 税理士の役割
M&Aには、税務リスクが伴います。税理士は、税金に関する複雑な問題に対応し、M&A後の税務リスクを最小限に抑えるための助言を行います。
2.1 税務デューデリジェンス
税理士は、税務デューデリジェンスを行い、過去の税務申告が適切に行われていたか、税務上のリスクがないかを確認します。未納税や税務調査の対象となっているかどうか、過去の申告に問題がないかを精査し、買い手にリスクを報告します。これにより、買収後に発生する税務上の問題を事前に防ぐことができます。
2.2 税金の計算とシミュレーション
M&Aの取引では、売り手側にとって売却益に対する譲渡益税が課されます。税理士は、これらの税金を正確に計算し、売却後にどれだけの税負担が発生するかをシミュレーションします。また、M&Aスキーム(株式譲渡か事業譲渡か)によって税務上の取り扱いが異なるため、売り手にとって最も有利なスキームを選定する助言も行います。
2.3 税務対策と最適化
税理士は、売り手が負担する税金を最小限に抑えるための税務対策を提案します。例えば、クリニックの売却後に発生する税負担を軽減するために、タイミングの調整や資産の組み替え、税控除の適用などの対策を講じることが考えられます。また、買い手にとっても、M&A後の資産運用や税金計画を最適化するための助言を行い、将来的な税務リスクを回避します。
2.4 M&A後の税務申告と対応
M&A後も、税理士は税務申告をサポートし、適切な税金処理を行うことで、税務リスクを回避します。売り手がクリニック売却後の譲渡益に関する税務申告や、買い手がM&A後に新たに発生する税金に関する申告を行う際、税理士が正確なサポートを提供します。
- 会計士の役割
会計士は、M&Aプロセスにおいてクリニックの財務状況を正確に評価し、適切な価格設定や投資判断を支援します。特に、会計士は財務に関するあらゆる側面からの助言を行い、買い手と売り手双方にとって重要な役割を果たします。
3.1 財務デューデリジェンス
会計士は、M&Aにおける財務デューデリジェンスを担当し、クリニックの収益性や財務状況を詳細に調査します。具体的には、過去の損益計算書や貸借対照表、キャッシュフロー計算書を精査し、隠れた負債や不正な取引がないかを確認します。これにより、買い手はクリニックの実際の財務状況を正確に把握し、適切な投資判断を行うことができます。
3.2 クリニックの価値評価
会計士は、クリニックの価値評価を行います。クリニックの収益性、将来のキャッシュフロー、資産の評価などに基づき、適切な評価を行い、売却価格の基準を提供します。また、EBITDA法やDCF法などの評価手法を用いて、客観的かつ市場に基づいた価格設定をサポートします。
3.3 財務計画の立案
M&A後の財務計画を立てる際、会計士がキャッシュフロー管理や資金調達の助言を行います。特に、M&A後に必要となる設備投資や運転資金の確保、将来の成長に向けた財務戦略を立案し、クリニックの経営を安定させるためのサポートを提供します。
3.4 内部統制の確認
会計士は、クリニックの内部統制が適切に機能しているかも確認します。例えば、収入の管理や経費の精査が正確に行われているか、資産の管理体制が整っているかを評価し、必要に応じて改善策を提案します。内部統制が適切でない場合、買い手がM&A後に運営上の問題に直面する可能性があるため、事前のチェックが不可欠です。
まとめ
M&Aにおいて、弁護士、税理士、会計士の役割はそれぞれ異なるものの、相互に連携することで成功を導く重要なパートナーとなります。弁護士は法的リスクの管理や契約書作成、税理士は税務リスクの評価と対策、会計士は財務デューデリジェンスと価値評価を担当し、M&A全体を支える役割を果たします。これらの専門家を適切に活用することで、売り手も買い手もリスクを最小限に抑え、取引をスムーズに進めることができます。
東海事業継承サポートセンター